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2023.06.07

「マナー」について #1

河原一久

1965年神奈川県生まれ。
著書に『読む寿司』(文芸春秋)、『スター・ウォーズ論』(NHK出版)、『スター・ウォーズ・レジェンド』(扶桑社)など。
監訳に『ザ・ゴッドファーザー』(ソニーマガジンズ)。
財団法人通信文化協会『通信文化』に食に関するエッセイ「千夜一夜食べ物語」を連載中。
日本ペンクラブ 会員。

インターネットやスマホの普及によって、世の中の情報へのアクセスは昔と比べて格段に容易になった。
以前は新聞やテレビ、雑誌や書籍などで積極的にアプローチしなければ何も知ることができなかったものだ。
ところが今では、ニュースまとめアプリやSNSでのシェアによって情報の方がこちらに飛び込んでくるようになった。
そして知りたいこともネットで検索すれば大概の情報は得ることができるようにもなった。
実に便利な時代になったものだと思う。


もちろん、一方で不便というか、弊害もある。
アクセスが容易になった分、人は情報に対して「受け身」になりがちになったし、努力なしに得られた情報に対して無批判に信じてしまう人も増えた。
これって巣の中で親鳥が運んできたエサをピーピー鳴きながらただ受け入れているヒナ鳥に似ていて、結果、何も考えずに巣の中でどんどん大きくなってしまっている、という状態にもなりがちだったりする。


厄介なのはこうして知り得た偏った情報を、少なくない数の人が「世の中の真実」として無意識に信じ込んでしまう傾向にある、ということだ。
そのジャンルは政治やスキャンダルも含めて多岐にわたるが、分かりやすい例として「マナー」を取り上げようと思う。


とにかくネットの情報まとめサイトやニュースまとめアプリなどでは頻繁に「マナー」に関する記事がシェアされてくる。
まあ、マナーに関しては学校教育の必須科目でもないので、多くの人は「なんとなく」しか知らないだろうし、そのため「ちゃんと知りたい」というニーズもあるからなのだろう。
実際、社会人になれば必ず問われる素養でもあるからだ。
挨拶や電話の応対など、個人差が如実に表れる。
特にテーブルマナーは最も分かりやすい部分であり、それゆえ「●●のマナーとは?」という記事もネットには多い。
そしてこれがかなりいい加減なものなのだ。