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2022.02.04

幸福の相対評価 #8

河原一久

1965年神奈川県生まれ。
著書に『読む寿司』(文芸春秋)、『スター・ウォーズ論』(NHK出版)、『スター・ウォーズ・レジェンド』(扶桑社)など。
監訳に『ザ・ゴッドファーザー』(ソニーマガジンズ)。
財団法人通信文化協会『通信文化』に食に関するエッセイ「千夜一夜食べ物語」を連載中。
日本ペンクラブ 会員。

こうなるともう、どこへ行ってもバイクの旅なら食事が楽しくなってしまう。
いつも尋ねる友人宅へ向かう途中、高速道路を一つ手前の出口で降りてみる。
路肩にバイクを停めてスマホで周辺の飲食店を探してみる。
地元の人に人気のお店の一軒や二軒、すぐに見つかる。
では行ってみよう。
その時に食べたいものを食べるとか、土地ごとのB級グルメに挑戦してみるとか、あるいはその店で地元の人がハマっているらしいメニューに運命を委ねてみるとか、選択肢はいくらでもある。
なるほど!これは美味いや!と感動することもあれば、大したことないな、いや、むしろこれは不味いのかも、なんて事態に首を捻ることもある。
そんなささやかな自分だけの「冒険物語」がまた面白くて仕方がない。


最近では、ふと立ち寄った店の名物が「朝鮮焼き」というもので、名前から推察できるように、朝鮮半島に由来した「コチュジャンと唐辛子をまぶして炒めた豚肉料理」だったのだが、これが個人的には大当たりだった。
で、調べてみるとこの「朝鮮焼き」、そんなにメジャーではないものの、各地にポツポツと名物にしている店がある。
また、コチュジャンと唐辛子をまぶすのではなく、別にタレとして用意して、それに肉をつけて食べる店もあれば、そもそも唐辛子などは使わず、塩とコショウだけで済ませている店もある。
人気ドラマ「孤独のグルメ」に登場した店もあって、実は意外と有名なメニューだったこともあとで知った。
都内はもちろん、山梨や千葉にも扱っている店はあり、調べたら茨城にもあった。
電車や車で出かけていくのはおっくうだが、バイクなら「ツーリングのついでに」という都合のいい名目も成立する。
かくしてバイクと食道楽の楽しみは広がり続けていくのであった。