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2022.09.30

文化への関心と尊重 #5

河原一久

1965年神奈川県生まれ。
著書に『読む寿司』(文芸春秋)、『スター・ウォーズ論』(NHK出版)、『スター・ウォーズ・レジェンド』(扶桑社)など。
監訳に『ザ・ゴッドファーザー』(ソニーマガジンズ)。
財団法人通信文化協会『通信文化』に食に関するエッセイ「千夜一夜食べ物語」を連載中。
日本ペンクラブ 会員。

現在ではアニメで描かれる町や店などが実在のものをモデルにしたり、あるいはそのまんま登場させたりするケースも増えてきた。
「涼宮ハルヒの憂鬱」は兵庫県西宮、「ガールズ&パンツァー」は茨城県大洗が舞台としている。
「化物語」のように東京、千葉、埼玉、名古屋、大阪と様々なロケーションの建物などをモデルにしているケースもある。
いずれの場合も熱心なファンが作品で使われた場所を「聖地巡り」として訪れる現象になっている。
そういえば韓流ブームの時には大ヒット作「冬のソナタ」のロケ地を巡る女性たちが大挙して韓国を訪れたりしていたが、いつの時代もヒット作の周辺には副産物として観光資産が生まれるものだ。


近年では町おこしとしてコンテンツ開発が行われるケースも増えている。
「ご当地アイドル」や「ご当地ヒーロー」などがいい例だろう。
ただ、この手の町おこしの場合、絶対条件としてなければ成立しないのが「作品の面白さ」だ。
で、この辺の領域になると自治体のお役人さんたちはてんで素人なので、結果的に「量産はされるけど成果が出ずに萎んでいく」というケースが後を絶たない。
この辺の構図は全国で過去に大量に作られたテーマパークがほとんど全滅してしまったのと同じだし、最近では「ご当地キャラ」にもこうした「皮算用だけが先行して尻すぼみ」となるものが多いが、これもまた同様だ。
「ご当地キャラ」の場合は、それでも一部の良識あるキャラや、そのスタッフたちのおかげで本来の目的である「ご当地を盛り上げる」という効果を地道に実現させている。
メディアなどでは「ゆるキャラブームもピークを過ぎたね」などと断じる人も多いが、ご当地キャラたちはそもそもがブームを目指しておらず、「ご当地の知名度とそこへの関心」を高めるのが目的なので、今も変わらず地道に活動を続けているのが実像なのである。