文化への関心と尊重 #1
河原一久
著書に『読む寿司』(文芸春秋)、『スター・ウォーズ論』(NHK出版)、『スター・ウォーズ・レジェンド』(扶桑社)など。
監訳に『ザ・ゴッドファーザー』(ソニーマガジンズ)。
財団法人通信文化協会『通信文化』に食に関するエッセイ「千夜一夜食べ物語」を連載中。
日本ペンクラブ 会員。
子供の頃、テレビでアニメを見ていると大抵の親は「そんなものばかり見ていないで少しは本でも読みなさい」と言われたものだった。
昭和40年代後半の頃だ。当時はまだ「アニメ」という言葉自体が一般には知られていなくて、一律に「テレビマンガ」と呼ばれていたものだった。
80年代に入り、「宇宙戦艦ヤマト」など起爆剤とした「アニメブーム」が巻き起こると「アニメーション」という言葉も一般化していったが、ブームの背景にはモノクロのアニメ創生期から徐々に発展していったものが、その到達点としての当時の最先端作品とともに、夕方や夏休みなどの時期の午前中に集中的に再放送されていたことも手伝って「映像作品としての再評価」に繋がっていったという事実もあると思う。
その頃にはフランスで日本製アニメの「キャンディ・キャンディ」が少女たちの絶大な人気を勝ち取り誰も日本の作品だなんて信じていなかったことや、「ゴルドラック」が視聴率100%を記録してニュースになったりしていたことが日本で一部のマニア雑誌でニュースになったりしていた。
「ゴルドラック」とは「UFOロボ グレンダイザー」のことで、この頃はフランスのテレビ局も教育番組を主体にしたものなどを含めて3チャンネルくらいしかなかったそうなので、100%という驚異的な視聴率もあり得る環境だったとは言えるが、それでもやっぱり100%はすごいことだと思う。
こうして日本製アニメーションの質の高さは世界で認知されることとなり、「ドラえもん」や「ドラゴンボール」など数多くの作品が輸出されていった。
日本ではある程度の文化的地位をアニメーションというジャンルは獲得できてはいるが、海外からの評価の方が遙かに高いのは、日本人、特に世界的視野も求められる政財界の人々がアニメだけでなくエンタメに関して疎いのも理由の一つだと思う。