縁とは #4
河原一久
著書に『読む寿司』(文芸春秋)、『スター・ウォーズ論』(NHK出版)、『スター・ウォーズ・レジェンド』(扶桑社)など。
監訳に『ザ・ゴッドファーザー』(ソニーマガジンズ)。
財団法人通信文化協会『通信文化』に食に関するエッセイ「千夜一夜食べ物語」を連載中。
ここで「縁」にまつわる話の番外編として、株式会社Collaboraters社長、鹿智之さんとの「縁」について語ろうと思う。
2011年の東日本大震災をきっかけとして、個人的にあえて避けてきた「人との出会い」について少し積極的になろうと考えていた。
些細なことだがチャリティTシャツを作り、それがきっかけで旧友と再会し、といった流れで夏には鎌倉の海岸でのパーティに参加していた。
そこで知り合ったのが鹿さんだったのだ。
すぐに意気投合して…っていうわけではなく、多くの人とごく普通に会話をし、ごく普通に約束をして、そして飲んだ。
みんなで歌舞伎鑑賞に行き、映画も観た。
鑑賞後に語り合うなど、自分にとっては当たり前だったことが、多くの人には新鮮だったことに驚きもした。
当時知り合った人の多くは今でも友人だ。
そして鹿さんもその一人で、僕との出会いを喜んでくれていたのが恐縮というか、こそばゆい感じがいつもしていた。
彼は僕の「友人」であって、「親友」ではない。
このほのかな距離感が実は心地よい。
考えてみれば知り合ってから今年で10年だ。
そんなことまるで意識していなかったが、一方で大分ご無沙汰だった。
一度、「久しぶりに会いましょう」と連絡を取り合ったこともあったが、このコロナ禍でいつのまにかうやむやになっていた。
そんなことさえ忘れていたが、どこかで気にはなっていた。
それが「友人」というものだろうと思う。
そんなわけで、「ふと思い出した」というきっかけでメールしてみた。
今、こうして徒然に文を書かせて頂いているのは、そのメールが始まりだ。
そしてこれもまた不思議な「縁」なのだと思う。
彼がこの「縁」という言葉を軸に、どんな生き方をしていくのか傍で見守りつつ、何らかのお手伝いができればと思い、駄文を綴った次第である。