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2023.01.27

世界と日本の差別の歴史 #6

河原一久

1965年神奈川県生まれ。
著書に『読む寿司』(文芸春秋)、『スター・ウォーズ論』(NHK出版)、『スター・ウォーズ・レジェンド』(扶桑社)など。
監訳に『ザ・ゴッドファーザー』(ソニーマガジンズ)。
財団法人通信文化協会『通信文化』に食に関するエッセイ「千夜一夜食べ物語」を連載中。
日本ペンクラブ 会員。

これも最近の例だが、沖縄で行われているデモに関連して、警備に当たった警察官が、地元の人たちに対し「土人」という言葉を使ったことがあった。
これには個人的にかなりショックを受けたものだった。
自分自身は沖縄の歴史に関してはほとんど知らないも同然なんだけれど、大人になってから初めて沖縄を訪問して以来、その旅に多くのことを学び、その虐げられ続けている歴史に胸を痛めている。
と、こう書くと何となく真面目に向き合っているようにも聞こえるかもしれないが、実際にはなかなかゆるい話だ。


もう10年以上前のことだけど沖縄の米軍基地でのイベントを手伝いに行った。
仕事ではなくプライベートでの訪問だったから、時間的には余裕があって件のイベント以外はレンタカーを借りていろいろと出かけたりした。
現地では米軍基地に勤務するアメリカ人の友人とそのまた友人たちと会って食事もしたんだけど、まずここで教えられたのが「沖縄タイム」というものだった。
例えば夕方の6時に待ち合わせをしたとしても、その時間通りに集まることは稀だと思ったほうがよくて、大抵は30分くらいは遅れたりするものなんだよ、と教えられた。
これがいわゆる「うちなーんちゅ」と呼ばれる沖縄が地元の人ではなく、米軍関係者であるアメリカ人から教わったという点にまずは唸った。
要するにそこまで文化として「当たり前」の事実なんだ、ということであって、彼らもその「おおらかさ」というか、「ゆるさ」を面白がっていたし、楽しんで受け入れていた。
のちにこの「沖縄タイム」というものがどうして成立したのかを自分なりに考えることになって、その結果、ひとりで大泣きすることになるんだけど、この時はまだ単純に自分でも面白い文化だなぁと受け止めていた。