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2021.12.03

幸福の相対評価 #1

河原一久

1965年神奈川県生まれ。
著書に『読む寿司』(文芸春秋)、『スター・ウォーズ論』(NHK出版)、『スター・ウォーズ・レジェンド』(扶桑社)など。
監訳に『ザ・ゴッドファーザー』(ソニーマガジンズ)。
財団法人通信文化協会『通信文化』に食に関するエッセイ「千夜一夜食べ物語」を連載中。
日本ペンクラブ 会員。

コロナ禍において「密を避ける」という生活習慣は、身を守るための最も身近な手段として定着したと言っていいだろう。
その影響でバイクが今、売れに売れているのだという。
確かに車や電車なら閉じた空間内に誰かと蜜になる可能性は一定の割合であるが、バイクなら基本的には一人だ。
仮に二人乗りをしたところで乗車時にはヘルメット装着が義務づけられているから密にはなりようがないし、走行中の風の勢いで飛沫なんて消し飛んでしまうだろう。
というわけで、今、新車・中古車を問わず、バイクは売れているし、自動二輪免許を取得するための教習所も満員御礼で教習の予約もキャンセル待ちになるほどの盛況ぶりだそうだ。


バイク人気の背景にはもう一つ、「リターンライダー」の存在があるという。
若い頃にバイクを乗っていた人が、やがて家庭を持ち、仕事に明け暮れた。
そんな人が年月を経て子供らが巣立ち、仕事もリタイアしたり管理職人になったりで、自分の時間というものが持てるようになった。
そこでかつて親しんだバイクに再び乗ってみよう。
余裕ができた時間を使って自由気ままにどこかへ出かけてみよう。
そんな人たちを「リターンライダー」と呼ぶのだそうだ。


かくいう自分も1年ほど前にバイクを購入し、時たまツーリングを楽しむ生活をしている。
リターンライダーなどではなく、ただの「初心者ライダー」なのだが・・・


バイクを利用することで「密を避ける」ことができる効果は乗り始めた頃から実感できていたんだけれど、こんな状況はいつまでも続くものではなく、コロナ禍も近いうちに収束していくのは間違いない。
それよりもはるかに大きな効果がバイクにはあり、それに自分自身が大いに驚いたものだった。
簡単に言うと、「食生活が激変した」のである。