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2023.02.03

世界と日本の差別の歴史 #7

河原一久

1965年神奈川県生まれ。
著書に『読む寿司』(文芸春秋)、『スター・ウォーズ論』(NHK出版)、『スター・ウォーズ・レジェンド』(扶桑社)など。
監訳に『ザ・ゴッドファーザー』(ソニーマガジンズ)。
財団法人通信文化協会『通信文化』に食に関するエッセイ「千夜一夜食べ物語」を連載中。
日本ペンクラブ 会員。

友人らとの食事が済むとホテルへ戻ったんだけど、部屋で飲む飲み物を買うのを忘れたので近くのコンビニへ向かった。
しかしそのホテルの近辺にはたまたまではあるんだけどコンビニはなくて、古ぼけたやや大きめの商店が一軒あるだけだった。
まあ、買い物をするには何も問題はないので商品を物色し始めた。
この時にどんな飲み物を買ったのかはてんで覚えていないんだけど、レジに向かう途中で山積みになっているお菓子類の中に、ちょっと変わったパッケージのものがあるのに気付いた。
いわゆる戦隊ヒーローのようなキャラクターが袋に描かれていた。
手に取ってみるとこの頃話題になっていた「ご当地ヒーロー」の類で、「琉神マブヤー」と書いてあった。
中身は飴だった。


翌日、昼食の際に友人にその話をしたところ、熱いリアクションが返ってきた。
「OH、マブヤー!有名ですよ、沖縄では。みんな大好きだね」
そう、マブヤーは地元では超人気コンテンツだったのだ。
さらに詳しく聞いてみると、イベントではマブヤーショーも行われていて子供たちに大人気で、作品中では「うちなーぐち」と呼ばれる古い沖縄の言葉もよく登場するので、その意味を知りたい子供たちがお年寄りたちとよく会話するようにもなって、意外な形で世代間ギャップを埋める役割を果たしていたのだそうだ。


仕事で「ご当地アイドル」の人気ぶりを扱ったことはあったけど、「ご当地ヒーロー」はよく知らなかった。
秋田のご当地ヒーロー「超人ネイガー」について少し聞いたことがある程度だったんだけど、「マブヤー」には「ネイガー」の関係者も関わっているらしい。
この時点で俄然興味がわいてきたし、帰りの飛行機を待つ空港のロビーで「マブヤー」のDVDが宣伝され、販売もしていたのが決定打で早速購入して帰宅後に観た。
そして衝撃のあまり、しばらく言葉を失うほどだった。